sugar broom
融けずに残る一欠けに 擁き解いては滲む色。
鏡に映す一人の今 瞼に触れる指先すら鮮明なまま 長く伸びた髪を切る
もう目は閉じ終えて
君といた季節が来る その眩しさの中
歩き始める。
仰ぐと浮かび 俯くと零れるので そのままにして綻ばせた
雲も路も水浸しで あの日の僕らに合う日だった。
指の繋ぎ方すら分からずに並んだ どこにも行けない二人のまま
探し物の無い ただ引き返す為に歩いた道を憶えている?
遠のいた今は 浮かぶ反射を塗り潰していくような日々で
もう届かないそっちの空へ向かう色を見送っているだけだった。
またあの場所に雨が降る。 やがて陽が射してあの花が咲く。
この季節は君といるようで 光と声で満ち溢れて
あの町にさえ行けば また君と会えそうで
揺れる葉は空より近くて 煉瓦の影にも寄り添ってくれて
見ていてどうにも まだ君といたいようで
そこで胸を押さえたまま ずっと経って痛んだ。
いつも君が聞きたいことばかりを探していて
君に聞きたいことなんて 考えもしなかった僕で
会えなくなってから話したいことが見つかっていくのを
また 君らしいねと笑ってほしくて
瓣を落とす雨に なぞらえる今は 指で
ひとつひとつを失くしていた もう確かめられない筈だった。
またあの坂に風が吹く。 それが合図のようにあの歌が言う。
この季節は君といるようで 翳る時間もどこか熱って
約束の無い日でも また君と会えそうで
水は濡れた花より浅くて 波の届く場所までは来ない君を
たった一歩の距離のまま 呼んで 傷痛んだ。
この季節は 君といるようで
その最初と最後の言葉を思い出しては
また走り出せそうで
泣いてでも進めばいいのに
この季節は君といるようで
僕はまだ涙の代わりになるものを探していて
それでも歩き出せば きっと
また君が微笑んでくれそうな気がしていたんだ。