遂にペンが止まった
静止するペン先からインクが玉になって滑り落ち
みるみる紙面に躍り出る
わたしは考えてるふりをして
本を読むひとたちを見る
何の本か確認することが出来ないまま
わたしはまたペンに力を入れる
近くを通る車の音も
本の城の前では控えめで
昼間の匂いが立ち込めるここで
わたしはノートのページをめくり
インクを紙の川に流していった
この海に浮かぶ海月のような余暇をわたしたちはここで殺して
帰る場所へ戻っていくのだ
白波立つ活字の海を後にして