caramelization
ひとひらを指で伝う
細い息がいちど震えて
望む色を得られないまま
アゼリアピンクがその手に揺れる
太陽が注ぐ銀色の雨も
窓辺にいては音だけの話
髪の黒には珊瑚が映る
その透明さには頬だけ触れた
摘めそうな色の小さな舌に
重なる傷の熱さばかり与え
唇に添う菓子の粉が
見ているだけで甘く焼きつく
つまづく姿が少し似合うことを
怒られるので言わないように
シロップのよう落ちていく髪を
ただ舌のようにすくっていた
流す涙を目で追うだけで
何か告げるよう肌へくちづけていた
抱きしめられない理由ばかり探していた
欲しい温もりだけを奪っている気がして
小さく握ったその手のゆくさきや
そこにあるものさえ知らずにいた
置き換えることでばかり解いてきたので
やっとのことでここにある傷が痛んだ
いくら押さえても止まないそれは
爪を立てても溢れ返して
笑い合うことを初めて知って
引き会わされるように苦しみを知った
並んで辿った空を思い出して
今はひとり繰り返していた