ゴミ部屋
「・・・ここはね、本当はゴミ捨場なんかじゃないのよ。私の部屋なの。
けど、みんなここにゴミを捨てていくのよ。ひどいでしょう?
おかげで私の部屋、すっかり汚くなっちゃった。
掃除しても掃除しても、毎日ゴミが運ばれてくるんだもの。
ねえ、あなたもここにゴミを捨てにきたの?
ちがうよねそんなことしないよね・・・」
クシャクシャの紙切れが一枚落ちています。
「・・・それ、なんだか顔色の悪い男の子が捨てていったの。
詩みたいだけど、最低なこと書いてあるのよ。見ないほうがいいわ・・・」
拾って見る。 さいってー・・・
破れたノートが一冊落ちています。
「・・・それ、赤茶色の眼鏡を掛けた男の子が捨てていったの。
小説みたいだけど、書きかけのままなのよ。もう投げ出しちゃったのかしら・・・」
千切れたフィルムが一束落ちています。
「・・・それ、猫みたいな顔した男の子が捨てていったの。
汚い写真ばっかり。アルバムに入れたくなかったんでしょうね・・・」
油で汚れた日記帳が一冊落ちています。
「・・・それ、テレピンくさい男の子が捨てていったの。
・・・。・・・」
ゴミだらけのこの部屋で、手に取れそうなものはもう見当たりません。